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あたらしい共有について 第4回

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意外だ!と思うかもしれないが、僕は基本的に夜は外出をしない。たまには遊びに出る事や仕事の会食に行く事もあるけど、最後に仕事の会食に行ったのを覚えていない

この理由は、いくつかある。
ひとつは、いうまでもなく、トラベラーやキャンパーは、夜は早めにベースに戻る。ひとたび、アウトドアに出ると、これは当たり前のことだが、都会にいると便利に溺れて忘れてしまいがちで、忘れないように心がけているわけではないが、自然と暗くなる前にベースへと戻る癖がついている

次の理由は、都会の夜は「小さな集金装置」に溢れている。
安い飲食店から便利な店、ベースでもテレビを見たりウェブを見れば、欲しくもないモノを買うような装置に溢れている。特に景気が悪くなると、この「小さな集金装置」がお互いをだまし合うようになって、夜の街が面白くなくなる。また、ベースに戻ってテレビも見なければ、ウェブもほとんど見ない生活を続けている。

みっつ目は太陽と月の時間をハッキリわけていて、太陽の時間には積極的に外に出て、人と会い、自分の思考もエネルギーも外へと向け、それなりの情報も吸収するのだろうが、月の時間には、ベースで内に向かい、情報を遮断し、自分と積極的に対話する。これは、日中撮影し、夜は編集する長年の映像制作でついた癖のようなものでもある

最後は、暗くなってベースに戻り、テレビを見たりウェブを見なければ、有り余る豊かな時間を過ごす事ができる。この時、コンピュータをまったく触らないわけではなく、むしろ原稿を書いたり、写真を現像したり、映像を編集するようなことは頻繁に行うし、かなり本も読む。また、ずっと家にいるワケでもなく、月夜に散歩に出かけたり、散歩しながら友人とバカ話をする日もあるが、いわゆる会食や飲みの類いには滅多に行かない。

最近は忙しく、自然の素晴らしい環境に触れる機会がめっきり減ったが、例えどこにいても、昼と夜がもたらす大自然の感覚だけは忘れないようにしたい。自然とは人々の体内に宿っているものであり、日々リスクが高まる「不自然な世界」に対抗する唯一の手段だから。

高城剛

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。著書に『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。自身も数多くのメディアに登場し、NIKE、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。2008年より、拠点を欧州へ移し活動。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

www.takashiro.com

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