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値段を決めるということ

隔週発行のフリーペーパー Good morning Tokyo に書いた記事を記事を転載します。

今日、 将来飲食店を開業したいという23歳男子がお店に来てくれました。割りに多くの人が抱きやすい夢みたいです。いつかお店を持ちたいという夢を持っているのは素晴らしいことです。僕も10年以上前からの夢でした。まだまだ経営者としては半人前ですが、そう考えている方の役立つのならと思い、実際やってみて僕が思うところを人に話すことがよくあります。GMTokyoの読者の方の中にも、そういった夢をお持ちの方がいるかもしれないので、飲食店を経営する立場からのお話もときどきしようかなと思います。

一つの難しいポイントとして、値段を決めなくちゃいけないこと。これまでのどの時代も(通貨が流通する前から)そしてこれからの時代も、物事の価値というのは需要と供給のバランスで決まっています。
飲食店の商品というのは、値段がついている食べ物や飲み物というふうに(そうでないとわかっていても)思ってしまいがちですが、そのものの価値自体はせいぜい売値の30%です。それでもバカみたいに儲かりはしません。人件費、家賃、光熱費、広告費、什器、初期投資の償却 etc 懐に入ってきた瞬間に大部分がごっそりと出て行ってしまうのです。

飲食店は販売店ではなく、サービス業です。商品ではなく、空間を売っています。
だれにでもお気に入りのカフェやバーはあるとは思うのですが、お気に入りの空間は(たとえ自分の部屋だとしても)マクドナルドよりは高いはずです。
料理や飲み物、什器、サービス もろもろの付加価値が、自分が演出した空間がマーケットの中でどれだけの評価を得られるか。それが経営のおもしろいところではないかと思います。

僕の場合、2年余りで30カ国程行ったのですが、特にヨーロッパで大きなショックを受けたお店と多く出会いました。お店側がちゃんと遊んでいるんです。そしてそういう店はやはりそれなりの値段を取っています。それだけの魅力があり、需要という土壌があるということです。文化的にすごく豊かだなぁと思いました。
それで僕も物ではないものに価値を求めるようになったし、そういったものたちがどれくらいの価値を持つかを正確に見極めるように心がけています。日本にはチップの習慣がないので、店側が対価を決めなくちゃいけない。それが難しい。
うちもそこそこの値段をつけているのだから手を抜かずしっかりと遊んでいきたいと思っています。
麻布十番という土地柄か外国人の方も多いのですが、満足したらリピートしてくれるし、チップもくれる。そのほうがやりやすいんですけどね。
デフレの時代で安ければいいという風潮がありますが、うちは価格だけで競争をするつもりはないです。疲弊するだけだし、やはり自分で設定した値段のプレッシャーを心地よく感じていたいので。